連れられて番所に向かう壮吉
命日は、月違いの命日で年に11回ある。妻の4回目の月命日が近づいてきた。せめて毎月供花でもと、スーパーの花売り場に出かけることにしている。とはいえ、仏花としてセットされたは、樒(しきみ)に花々が縛られたているみたいで気に入らない。菊、竜胆、カーネーション、カスミ草などバラ売りのものを買ってきて、およそ仏壇探索四十 洗腦に供えるには相応しくないものを供えている。妻の遺影がそれを見て、「プッ」と笑っているようだ。
今日のテレビのニュースで取り上げられていたが、パソコンをやり始めた高齢の男性が詐欺に遭ったそうである。出会い系か何かで知り合った女性が、「私は一人暮らしです。遺産を分け与える家族がいないので、私のお金500万円をもらってください」そして、手続きだの何だのといって、ずるずると700万円も送らせて、結局その男性は何ももらわずにドロンされたらしい。テレビ音声の聞き流しだったので、詳しいところは聞き逃がしているが、だいたいはそんなところだったと思う。騙したヤツは許せないが、騙された男性もお気の毒だけれど同情しがたい。歳をとったら何事も自分一人で判断しないで、若い人に相談すべきだと思う。「老いては子に従え」という言葉がある。自分の判断は絶対正しいと思っても、強情張らずに若い者の意見を聞こう。日は、カップ?ラーメンで済ませた。「旨かったか?」はい、イリコとかつおの出しだそうで、「美味かった」です。そう、「スープは旨かったです、スープは…」後は、お返事しかねる。
明日は「レコードの日」だそうで、新しくカットしたアナログ?レコードが発売されるそうだ。レコードの音は「温い」のだそうで、オールド?ファンのノスタルジアだと思うのだが、その「温い」を科学すれば、レコードは帯域幅が狭くて、高域がカットされているのが原因だそうである。高齢になると高域の音が耳の邪魔になるので、無い方が良いのだとか。
若いアーティストも発売するとかで、アナログ?レコードがブームになりつつあるとか、既にブームだとか。日本で唯一レコードのカッティングをしている東洋化成の製造が、需要に追い付かないらしい。
下手をすると傷を付けてしまうデリケートさが、CDをぞんざは、すぐに傷だらけにされてしまいそうだが…。
お縄こそ掛けられていないが、長次には、打ちひしがれて咎人さながらであった。見かねた賢吉が壮吉に声をかけた。
「おじさん、大丈夫だよ、俺の親父や与力の長坂さまは、おじさんの味方だからね」
壮吉は黙ったまま項を垂れた。
「おじさん、このまま黙って歩いていたのでは気が滅入るだろう、俺と話をしないか」
壮吉は、気のない返事をした。
「おじさんは、与太郎という男を殺してはいないのだろ」
「昨夜家に帰ってお園の話を聞いたが、賢吉さんてくれてい朝までぐっすり寝た」
「ノミは盗まれていなかった?」
「今日は、ノミを使う仕事はしていないので、確認はしなかった」
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