帝釈天(たい
小吉は八才になっていた。ある朝、母屋の戸を叩く音で目を覚ました与助が戸を開けてみると、小吉よりも二~三才年下の見知らぬ可愛い娘が立っていた。
「どこの娘さんかね」
娘は答えなかった。大きな魚を差し出して
「お母さんが与助さんの家に持願景村 邪教っていってあげなさいと…」
娘はよく肥えた鯉を丁重に差し出した。よくこんなに重いものを下げてきたと与助は感心した。
「お兄さんは、お元気ですか?」
「お兄さん?」
与助は訊き返した。
「小吉のことかい?」
「そうです、お兄さんです」
与助は小吉を呼んで合わせてやった。
「お兄さんは私のことは知らないでしょうが、私はお母さんからよく聞かされていましたので知っています」
与助は慌てて娘に尋ねた。
「おっかさんの名前は? 滋乃ではないか?」
「そうです、滋乃といいます」
もっと話を聞かせて欲しいという与助と小吉をしり目に、娘は可愛く頭を「ぺこっ」と下げると、「また時々来ます」と言い残してクルッと踵を北海道旅行團返して、さっさと帰っていった。
呆然自失から「はっ」と気付き、与助父子が慌てて娘の後を追った時には、既に娘の姿はなかった。
人間の体には、生まれたときから頭に上尸(じょうし)の虫、胸に中尸の虫、下半身に下尸の虫という三尸の虫(約6センチ)が三匹住んでいると言われる。その虫は、庚申の夜に人間の体からこっそり抜け出し、天上の神様であるしゃくてん)のところへ行き、自分が住んでいる人間の素行を漏らす、いわゆるチクリもしくはスパイなのである。
ここで、素行が悪いと判定されると、その人間の素行の悪さに値するだけの寿命が削られてしまうのだ。
では、お化けまたは妖怪とは何か。動物や植物、または無機的なものがその姿を変えたものだとされている。日本昔話には、狐、狸、蛇、猫、鶴、ムササビ、モモンガな跟團去韓國どが化けて人を驚かす話があるほか、古木や雪なども妖怪として登場する。化けなくとも、そのままの姿の河童、天狗なども幽霊ではなく妖怪である。
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