寂しさという
寂しさという

 僕と冬子さんが一緒に住み始めたのは月曜の夜からだった。月曜日は院長の当直の日で、いつもなら自分が当直しなければならないはずだったが、その日は院長が当直をし、自分は帰ることができた。  僕と冬子...

定義に基づいて
定義に基づいて

秘湯に旬を求めないのは「いつでも良い??ではなく、いつ訪ねても変わらないということだ。言い換えれば何時も自然が織り成す色を見せるのが秘湯だろう。故に自然の懐にある露天風呂に無限の感慨を思うのだ。...

方ないじゃな
方ないじゃな

    我々は場所とだいたいの時刻を打ち合わせ、電話を切った。     dugに着いたとき、緑は既にカウンターのいちばん端に座って酒...

事件はかなり
事件はかなり

    一九七十年という耳馴れない響きの年はやってきて、僕の十代に完全に終止符を打った。そして僕は新しいぬかるみへ足を踏み入れた。学年末のテストがあって、僕は比較的楽...

帝釈天(たい
帝釈天(たい

 小吉は八才になっていた。ある朝、母屋の戸を叩く音で目を覚ました与助が戸を開けてみると、小吉よりも二~三才年下の見知らぬ可愛い娘が立っていた。    「どこの娘さんかね」  娘は答えなかった。大き...